「第6回地盤改良シンポジウム」に参加しました


■ シンポジウムの概要

2004年9月29日と30日に「第6回地盤改良シンポジウム」(主催:日本材料学会、協賛:地盤工学会、土木学会)が京都で開催されました。土質基礎研究室では3件の論文発表を行う機会を得ましたので、会議の内容について報告します。

近年は地盤改良の重要性が各所で高まりつつあります。従来の用途に加え、地震による地盤災害の防止や土壌・地下水汚染の対策などにも地盤改良技術が広く適用されています。地盤改良シンポジウムはこのような状況から、1994年より隔年で開催されているものです。

土質基礎研究室では、従来より軟弱地盤対策について調査研究を行ってきました。最近ではコスト縮減や事業のスピードアップの観点から、「真空圧密工法」などの新工法の泥炭性軟弱地盤への適用性、深層混合処理工法の改良率低減、杭基礎の合理的設計手法などの研究に取り組んでいます。

今回のシンポジウムでは、48件の一般論文発表、「関西国際空港建設の現況と地盤改良技術」というテーマの特別講演、さらには地盤改良に関する技術展示が行われました。シンポジウムのプログラムは以下のとおりです。

9月29日(水) セッションT:「杭・ジオシンセティックス」 セッションU:「深層混合・基礎地盤」 セッションV:「新工法・新材料」 特別講演:「関西国際空港建設の現況と地盤改良技術」   古土井光昭氏(関西国際空港用地造成株式会社)

9月30日(木) セッションW:「液状化対策・SCP」 セッションX:「地盤環境・文化財保護」 セッションY:「固化・安定処理」 セッションZ:「リサイクル材料」


写真−1 日本材料学会地盤改良部門委員会委員長による開会挨拶(嘉門雅史 京都大学大学院教授)

■ 特別講演

「関西国際空港建設の現況と地盤改良技術」と題し、関西国際空港の2期工事の地盤改良と埋め立ての施工管理および沈下層厚管理などについて、関西国際空港用地造成株式会社の古土井光昭氏による特別講演が行われました。(写真−2)


写真−2 古土井光昭氏による特別講演

関西国際空港は、泉州沖5kmの海域にわが国初の24時間運用可能な海上空港として、1994年9月に開港しました。今年でちょうど10年目に当たります。その後、2本目の滑走路を備える2期空港島の建設工事が1999年7月に着手されました。

2期空港島は、1期空港島よりもさらに沖合に建設されるため、表−1に示すように自然環境や規模、工期など1期工事以上に厳しい条件下の施工となっています。克服すべき技術課題として、@大水深の海洋工事、A大量急速施工、B沈下対策、C環境保全があります。

2期工事では、1期工事に比べて施工技術の進歩もさることながら、GPSを活用した高さ管理、深浅測量技術、船位誘導システムなど測量および計測技術において格段の進歩が見られました。2期工事は極めて厳しい条件での空港島造成工事ですが、1期工事の経験をもとに綿密な計画を立て、最新のテクノロジー導入などのさまざまな工夫を重ねることで、2007年の供用開始を目指して工事は順調に進んでいます。(写真−3)

表−1 1期工事と2期工事の規模、自然条件比較

規模自然条件
埋立面積護岸延長埋立土量平均水深平均沈下量
1期工事510ha11.2km1.8億m3-18.0m11.5m
2期工事545ha13.0km2.5億m3-19.5m18.0m


写真−3 建設中の2期空港島(2004年6月撮影)

■ 論文発表

土質基礎研究室が発表した論文とその概要は、以下のとおりです。

「真空圧密工法による改良地盤の杭水平抵抗に関する合理的設計法」:冨澤幸一

この設計法は、軟弱地盤対策として真空圧密工法を実施した改良地盤の杭基礎について、改良後の増加した地盤せん断強度を杭の水平抵抗に反映させるものです。軟弱地盤など杭の諸元が水平抵抗で決定される現場条件では建設コスト縮減が可能となる有用な設計法と考えられます。

「ボックスカルバート基礎における深層混合処理の改良仕様」:林宏親

軟弱地盤上に造るボックスカルバートの基礎地盤処理として深層混合処理工法を施工する場合の合理的な改良率および改良範囲について、遠心力模型実験により検証したものです。

「橋台背面における深層混合処理の変形抑止効果に関する遠心模型実験」:澤井健吾

橋台背面部の盛土荷重による側方流動対策として深層混合処理工法を施工する場合の合理的な改良柱体の配置について、遠心力模型実験により検証したものです。


写真−4 発表する澤井研究員

論文発表は、杭基礎や地盤改良工法の設計、施工技術のほかに、地盤環境、リサイクル材料、景観、文化財保護などに関わる幅の広いものでした。大学の研究者による発表が半分近くありましたが、新工法、新材料の開発や実用化に積極的に関わっているという印象を受けました。

泥炭性軟弱地盤が広く分布する北海道では、建設事業を行う際に地盤改良が重要となることが多々あります。土質基礎研究室では、建設コストの有効活用や自然環境に配慮した合理的な設計手法や軟弱地盤対策について取り組んでいく考えです。



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