「寒冷地における凍上被害とその対策−古くて新しい凍上の話−」講習会で講演しました


 2006年4月18日に札幌エルプラザで、4月20日に北見工業大学で「寒冷地における凍上被害とその対策−古くて新しい凍上の話−」講習会(主催:地盤工学会北海道支部)が開催されました。

 地盤工学会北海道支部では、「地盤凍上に関する研究委員会」を2003年に設立し、これまで自然の寒気による地盤の凍結に関する工学的に有用な情報を集約し、広く発信することを目指して活動を行ってきました。この講習会は3年間の活動内容をとりまとめて発表し、北海道の凍上問題の解決に貢献しようとするものです。研究委員会の委員である寒地地盤チームの西本上席研究員が凍上対策について講師を務めましたので報告します。

 講習会の副題にあるとおり、地盤の凍結・凍上は、古くて新しい課題といえます。「古い」というのは、北海道において、地盤の凍上対策が我々の先達たちによって古くから取り組まれ、これまでに成果を生み出してきて現在に至っているという意味です。現在の置換工法技術の基礎となった伊福部博士の研究は1960年代に発表され極めて大きな貢献をしています。「新しい」というのは、例えば土の凍結メカニズム一つ取り上げてもまだ明確に理解されているわけでではなく現在も研究が続けられていることや、自然の寒気による地盤凍結は未だに定量科学になりえていないと考えられるからです。

 この講習会では、凍上に関する基本的な事項に加え、被害事例などをもとに既往の対策技術から最近の話題までを広く取り上げました。まず土の凍結と凍上の違いから始まり、凍上機構、凍上を支配する要素について説明しました。次に凍結深さを実測によって求める方法、計算によって求める方法、また、2003年に地盤工学会で基準化された「凍上性判定のための土の凍上試験方法(JGS 0172-2003)」を解説しました。その後、凍上対策工法について、実際の被害事例を取り上げ、置換工法の考え方、近年施工例が増えている断熱工法の留意点などを説明しました。

 札幌会場では約120名、北見会場では約70名の参加者が熱心に聴き入っていました。

■プログラム
1.「土の凍結・凍上現象」
2.「凍上に関する調査・試験」
3.「凍上対策工法」
4.「凍上の被害事例とその対策」



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