西本聡 上席研究員 平成17年度地盤工学会北海道支部賞を受賞!


 平成18年4月27日、ホテルモントレ札幌で、「平成17年度地盤工学会北海道支部通常総会」が開催され、寒地地盤チームの西本聡上席研究員が、「平成17年度地盤工学会北海道支部賞」を受賞しました。これは平成18年2月6〜7日に開催された「第46回地盤工学会北海道支部技術報告会」において発表した「苫小牧アレーで観測された2003年十勝沖地震の地震動の特徴」(共著者:三輪滋、池田隆明(飛島建設防災R&Dセンター))に対して授与されたものです。

 寒地土木研究所では、苫小牧東部の日高自動車道の2地点の軟弱地盤において、砂層・火山灰層の液状化特性の把握、道路盛土の液状化対策効果の確認、道路盛土の地震時挙動の検討などを目的として地盤と道路盛土の液状化アレー観測を1990年より実施しています。液状化アレー観測とは地震計を集中的に配置し特定の構造物や地盤の挙動を観測するものです。2004年までに1993年釧路沖地震の際に土中の間隙水圧が上昇した記録などが観測され、様々な角度から、分析検討を行ってきました。2003年十勝沖地震では、過剰間隙水圧の上昇記録と今までにもっとも大きな加速度記録が観測されました。

 本論文では、十勝沖地震本震および余震で獲得した地震動記録と過去の記録の分析により、表層地盤の非線形増幅特性、間隙水圧上昇特性、記録に含まれるやや長周期地震動の特徴などを検討しました。その結果、地震動レベルの増大にしたがい、表層地盤のせん断ひずみの増大や過剰間隙水圧の上昇によりせん断剛性が低下し、表層地盤の一次固有振動数は小さな地震動に比べて80%程度にまで低下したこと、地中に対する地表の振幅比が低下したことなど表層地盤の非線形増幅特性を明らかにしました。また、5秒から8秒にかけてのやや長周期成分の卓越は、苫小牧観測点が位置する勇払平野の深い堆積地盤構造で励起された地震動の影響と考えられますが、特に勇払平野に限られることではなく、深い堆積地盤構造を持つ平野部では重要な課題であることを指摘しました。

 このような研究成果は、表層地盤の地震時挙動を検討する場合の地盤に生じる非線形性の重要性、やや長周期地震動の励起について深い地盤構造を考慮する必要性を提起し、地盤耐震工学に関する重要な知見を提供していることから、地盤工学に関する学術および技術の進歩発展に寄与すると認められたものです。



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