「第41回地盤工学研究発表会」に参加しました


 2006年7月12日から14日までの3日間、鹿児島市で第41回地盤工学研究発表会(主催:社団法人地盤工学会)が開催されました。大会は、研究発表を中心に、災害および地盤工学の11のトピックスについて討議する「ディスカッションセッション」、各研究分野の第一人者による「展望」、関連する最新技術の「技術展示コーナー」、昨年9月に発生した台風14号による山陽自動車道盛土のり面崩壊に関する特別セッション、首都圏を直下地震から守るための提言を行う特別セッション、一般市民向けに公開する市民フォーラムなどが行われ、約2,200名の参加者がありました。

◆ 研究発表

 寒地土木研究所では以下の14編の論文を発表しました(発表のみの件数、共著は除く)。

<寒地地盤チーム>

  • 岩砕材料による盛土の施工管理方法(佐藤厚子)
  • 鋼管杭の動的水平載荷試験法(その1−システム開発)(冨澤幸一)
  • 泥炭地盤における盛土補強併用プラスチックドレーン工法の改良効果(林宏親)
  • 大型載荷版を用いた平板載荷試験による直接基礎寸法効果に関する研究(福島宏文)
  • 屋外試験土槽における凍上試験の考察(泉澤大樹)
  • トレンチャー式撹拌工法の改良強度に関する評価(橋本聖)
  • 固化した石炭灰スラリーの長期強度(城戸優一郎)
  • 深層混合処理工法を用いた縁切り対策に関する遠心力模型実験(澤井健吾 帯広道路事務所:前研究員)

<防災地質チーム>

  • 修正RCIと打撃応答量による岩盤の評価(伊東佳彦)
  • 遠心力模型実験による岩盤斜面の安全率評価法に関する研究(日下部祐基)
  • 建設発生土に含まれる砒素の溶出特性について(その2)(田本修一)
  • 北海道川下崩壊斜面における地質と風化性状(日外勝仁)

<水利基盤チーム>

  • 置土厚が異なる泥炭地盤の置土施工後の長期沈下挙動(田頭秀和)
  • 泥炭地浅部の物理的性質と圧縮性(小野寺康浩)

◆ ディスカッションセッション

 ディスカッションセッションの「都市地盤情報―次世代に引き継ぐ知的公共財産―」では、地盤情報に関する研究の発表と、各地で作成されている地盤情報データベースの紹介があり、今後の地盤情報のあり方について討議が行われました。寒地土木研究所からは、寒地地盤チームが構築に関わった「北海道地盤情報データベースVer.2003」のデモンストレーションおよび組織運営等に関する紹介を行いました。

◆ 特別セッション

 特別セッションの「台風14号による山陽自動車道盛土のり面崩壊を経験して」では、調査検討委員会が導いた原因および復旧方法、災害発生から復旧までの対応について報告がありました。この災害は、施工後10年を経過し本来安定しているはずの盛土が崩壊したことで、地盤工学に関わる技術者にとって大きな衝撃でした。崩壊要因は、気象的要因、地質構造的要因、地形的要因、排水工の要因が重なったものと結論づけられました。復旧工法の3万m3の盛土はすべて岩砕で行われました。これは盛土内に浸透水が滞水しないようにするとともに、降雨にかかわらず施工できるため工期短縮も考慮されたものです。さらに、のり面の下部にはフトン篭が8段ほど使用されたほか、横断管や地下排水工が充実され、盛土内への浸透水および地下水を速やかに盛土外へ排出できる構造となりました。


 大会期間中は、最高気温が35℃を超える猛暑が続きました。地球温暖化防止の観点から会場の温度は28℃に設定されていましたが、そのためノーネクタイ、ノー上着での参加が奨励されていたのが幸いでした。

 本研究発表会では、国内の研究事例や新たな技術動向など、今後の研究の参考となる情報を得るとともに、多くの方々と発表などを通じて交流することができました


城山から桜島を望む


桜島湯之平展望所


流路工


大正3年の噴火で埋没した鳥居



[▲寒地地盤チームTOP] [▲寒地土木研究所TOP]