「北海道・九州の特殊地盤に関する共同セミナー」を開催しました


2006年7月10日に佐賀大学において特殊地盤に関する共同セミナーを開催しました。

寒地土木研究所は、北海道に広く分布する泥炭について多くの研究課題に取り組んできました。寒地地盤チームでは、泥炭地盤独自の沈下予測式や強度算定式などを提案し、「泥炭性軟弱地盤対策工マニュアル」にまとめています。一方、九州には有明海沿岸地帯に超軟弱地盤である有明粘土が存在し、様々な軟弱地盤対策工が検討されてきました。現在、双方では、軟弱地盤の地盤改良や基礎構造物の設計施工法について、コスト縮減を目指した研究が進められています。

地盤工学会が設置した「基礎構造の設計に関わる新技術評価に関する研究委員会」の活動を通じて、「有明海沿岸道路検討会(座長:荒牧軍治佐賀大学教授)」から意見交換の申し出があり、一度セミナーを開催しお互いの研究を説明、意見交換する機会を持つこととなったものです。

日程調整の結果、7月12日から14日まで鹿児島市で開催される「第41回地盤工学研究発表会」に合わせ、佐賀大学において共同セミナーを開催することとなりました。当方から西本上席研究員、冨澤主任研究員、林主任研究員の3名が参加しました。九州側からは「有明海沿岸道路検討会」のメンバーである荒牧教授、国土交通省佐賀国道事務所、佐賀県道路課、佐賀県佐賀土木事務所、設計コンサルタント、オブザーバーとして三浦哲彦佐賀大学名誉教授らの参加です。発表内容は以下のとおりです。

■プログラム

発表−1 「有明軟弱地盤の耐震設計」 大塚 哲哉 氏(大塚構造事務所)
発表−2 「複合地盤杭工法」 冨澤 幸一 主任研究員(寒地地盤チーム)
発表−3 「北海道の軟弱地盤対策」 林 宏親 主任研究員(寒地地盤チーム)
意見交換

まず荒牧佐賀大学教授から、セミナーの開催の経緯について説明がありました。続いて大塚哲哉氏が佐賀の地震、軟弱地盤の地盤振動と地盤免震、杭周辺地盤改良工法などについて発表しました。杭周辺地盤改良工法は、杭周辺に地盤改良を行いその強度増加を設計に見込むところは、複合地盤杭工法と同じなのですが、橋脚を対象としていること、杭〜地盤改良系を構造体として取り扱うという違いがあります。有明海沿岸道路の矢部川橋(斜張橋の端橋脚)でも採用されており、非常に興味深い内容でした

冨澤主任研究員は、複合地盤杭工法(改良地盤の強度増加を考慮した杭設計施工法)の実用化について、設計の考え方、解析結果、および複合地盤杭の設計施工要領を紹介しました(写真−1)。林主任研究員は、北海道における泥炭性軟弱地盤対策工法と最近の動向について紹介しました(写真−2)。

意見交換では、ほとんど九州側からの質問に我々が答えるという形で進みました。複合地盤杭工法に対しては、杭と周辺地盤の相互作用の考え方や地震時の挙動などについて質問がありました。軟弱地盤対策については、泥炭の基本的性質から盛土周辺地盤の変状対策など多岐に渡る質問がありました。今後、約20年かけて建設する佐賀県内の有明海沿岸道路について、品質を確保しつついかにコストを下げるかという熱意が感じられる意見交換でした。

短い時間ではありましたが、軟弱地盤に取り組む双方にとって大いに勉強になるセミナーでした。今後とも交流を継続することを約束し、次の目的地である鹿児島に向かいました。


写真−1 冨澤主任研究員の発表


写真−2 林主任研究員の発表



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